デザイン未経験のWeb編集者が「コロコロコミック」の表紙デザインから学んだこと
入社1年目のコンテンツディレクターです。このnoteは元Webデザイナーの上司に「デザインとは?」について教えてもらった時の記録です。わたしと同じ境遇でデザインを学び初めた方や、デザイン初学者の部下を持つ方の参考になったらいいなと思います!
■クリエイティブの言語化、できますか?
毎週木曜日の朝10時から行っているレクチャー会。今日もいつものように師匠の前に座ると、
師匠 どんなデザインが好きですか?
と突然の質問。
カナ …こういう雑誌の表紙とかですかね?
ぱっと思いついたのが雑誌の表紙だったので、毎月買っている大好きな雑誌の名前を答えました。
師匠 なるほど。どうして好きなんですか?どこが好きなんですか?
カナ どうして!?……んんーーオシャレだから、ですかね?
師匠 はい、それが今日の課題です!その回答ではまだまだですね~。デザイナーにとって大切なことは、自分の生み出したクリエイティブを言語化することなんです。だから当然、自分の『好き』や、世の中のクリエイティブもしっかり言語化できるようにならないとといけません。
これはどんなデザインで、自分はどう感じたから、好きなのか。デザイナーを目指すなら、そこまで話せるようになりましょう!
■第一歩、クリエイティブの分解
とは言っても、デザイン初学者の私が急に『クリエイティブ』を言語化するのは難しい。毎日目にする電車内の広告も、SNSの広告も、飲料水やパン、お菓子のパッケージも、雑誌や本の表紙も、すべてが完成された一つのデザインなわけで、そもそもそれが当たり前すぎて"デザイン"として認識していなかったわけで。
……ということで初歩の初歩からスタート。
師匠曰く、言語化の第一歩はクリエイティブの分解をすることだそう。
師匠 まずこれを見てください。
師匠 大人になった今でも大好きなんですよ~。……でもコロコロコミックって、表紙だけでも多くの情報が詰まっていてたり、使用されている色の数が多かったり、規則性の無い自由な配置だったり、一見UIがめちゃくちゃのように感じてしまう方もいるかもしれません。特に先ほどあげたようなデザイン(「& Premium」の表紙)が好きな方はそうだと思います。
カナ たしかに……私にとってはど真ん中で好きなデザイン!では無いかもしれません。
師匠 ではAdobe IllustratorやPhotoshopを勉強するなかで身に付けた知識を使ってクリエイティブを分解してみましょう!
……例えばタイトルに「4段階で縁を重ね」ていたり、「グラデーション」にしたり、「奥行きが出るように文字を配置」したり、「ちょっとずらして影みたいに」していたり。ありとあらゆるデザインが詰まっていることが分かりますよね。
カナ 確かに!いろいろなテクニックが使用されてますね!あれ、でもデザインするときは、「見やすさを考えて使用するフォントやカラーの種類はできるだけ少なく」したり、「ユーザーの目線を考えてオブジェクトを配置する」っていうのを習った気がするんですが……完全無視…?ですね。もっとすっきり読みやすくして欲しい~!!!
師匠 そしたら今度は小学生の男の子の気持ちになってこのクリエイティブを見てみてください。
……小学生の男の子の気持ち?
はっとしました。
それまでごちゃごちゃして、雑多なものに感じていたクリエイティブ。
でも小学生の男の子に視点を変えてみると、レインボーで派手な文字も、しつこいほどの縁取りも、整列されていない文字の配置も、それらが一気に「わくわくが詰まった興味を引き付けるクリエイティブ」に感じられたんです。
初めに味わった違和感と、視点を変えたあとの感覚を整理してみると、こうです。
気付くと、私の中の小学生の男の子はもう本を手に取っていました。
……「すっきり読みやすく」する必要なんてどこにもない!!!
師匠 この本の読者、つまりこのデザインのターゲットは小学生の男の子なんです。だからターゲットにとってはこのクリエイティブが大正解。昔から変わらず愛されて、ちゃんと売れ続けていることが証拠ですね!
電車内の週刊誌のつり広告もそうです。ターゲットは通勤中の30代から40代のおじさま。真っ黒な太字、赤い背景、白黒の顔写真、そして余白が無いほどの多くの情報。
一見こちらもごちゃごちゃだけど、私はこんな意図があると思っています。「なんだか嫌なこと、大変なことが起きてる!」という負の部分を感じさせ、恐怖感を煽り、興味を引き付ける。ターゲットの視線を奪い、もっと読みたい!と思わせるにはあのクリエイティブが大正解なんですよ。
こうして分解していくことで、どんな人をターゲットにしていて、だからこのクリエイティブで、どんな効果を期待しているのかを説明できるようになりますね。これが言語化です。
カナ なるほど!今までは見たイメージだけで好き嫌いと言っていただけだったのですが……こうやってデザインの構成が分かるとなんでこのフォントなのか、この色を使ったのかを考えるようになりますね。
ニガテ!嫌い!って思ったクリエイティブでも実は色々なことが考えられていて、ある特定のターゲットにはめちゃくちゃ刺さるデザインだったりする、ということですね。
■それでは言語化に挑戦
それではもう一度、先ほどの師匠から学んだことをもとに「好き」の言語化に挑戦してみます。
このデザインの好きなところ
・少ないカラーと余白をたっぷり使ったレイアウトのシンプルさ
・考え抜かれたキャッチーなコピー
・サンセリフ体、明朝体らしいフォントに海外風なレトロ感を感じる
・写真にオレンジがかったエフェクトがかけられていて温かみを感じる
⇀かっこつけすぎない、人の手作り感、エモさがある
こうしてみると雑誌のコンセプト(=伝えたいこと)と、アウトプットされたクリエイティブがぴったりマッチしているのが分かります。
私はこのデザインの「心地よく日々を暮らすというコンセプトのような、余裕を感じさせるシンプルな構成と、手作り感を感じる温かみのある写真、一文字一文字丁寧に紡ぎ出されたコピー」が好きです^^
(……言語化できてますかね?)
■つまりデザインって情報を伝える手段のこと?
こうして見ていくとデザインって「絵を描くこと」ではなくて、「情報を伝えること」なんじゃないかと気付きました。ここに水色使いたい!じゃなくて、"○○に~という情報"を伝えたいからここは水色にする、という順番がデザインするということである。
と、その気づきを師匠に報告しました。
師匠 まさにその通りです。Webデザイナーはあくまでも、伝える相手、解決する課題があって仕事をします。誰に何を伝えたいのかがまず初めにあり、それをもってどうしてこのレイアウトなのか、どうしてこの色なのか、どうしてこのフォントなのか、どうしてこの効果をつけたのか。それを説明できるようにならなければいけません。
何種類もある色をどれにするか何時間もかけて悩むんじゃなくて、誰に何を伝えたいかがしっかり設計できていれば、おのずとそれを伝える(=表現できる)色は決まってくるはずなんです。
そうすると例えばクライアントに「なんでこの色にしたの?」と聞かれたときに、胸を張ってその理由を伝えられますよね。そうやってクリエイティブを言語化できるのが、プロのデザイナーと言えるんです。
カナ ……納得~~~!これから。
師匠 映画館に置いてあるチラシとかいいですよ!青春ものはどんな色を使ってどんな構成が多いのか。それによって見る人にどんな印象を与えたいのか。逆にミステリーは?洋風の映画は?コメディは?とか見るポイントが多くて勉強になります!
あと何メートルもある大きい広告ありますよね?あれ、中には引き伸ばしただけではなく、ちゃんと大きい広告用にクリエイティブされたものもあるんです。大きいポスターだからこそ省かれている情報、逆に追加されている情報があったりするんですよ~!そういう視点を持つとクリエイティブの見方が変わりますよね。
これからいかに多くのクリエイティブをみていくか、その数がものを言うと思いますよ。身近なところに沢山の素晴らしいクリエイティブがあるのでぜひ見てみてください。好きに理由をつけて相手に話せるようになったらめちゃくちゃ強いと思います!
カナ はい、言語化頑張ります!
ということで今回は師匠から、そしてコロコロコミックから、デザインするとは「絵を描くこと」ではなく、「情報を伝えること」だと学びました!
最後までお読みいただきありがとうございました^^
(文:編集部カナ)