モテる企画書のつくり方。自慢話よりも「思いやり」?!
はじめに
クリエイターに特化したビジネス書があってもいいじゃないか――。
仕事に関わる技術やキャリアだけでなく、疲れが取れる休み方、遊び方などの体調管理など。人生を効率的に・豊かに過ごすための「生活術」や「仕事術」をクリエイターの実例を通じてお伝えしていきます。
Webディレクターが描く企画書には大きく2種類、社内向けのものと社外向けのものがあります。社内向けのものは新規自社サービスの提案などですが、社外向けのものはクライアントにサービスを提案する際の「クロージング資料(プレゼンテーション)」です。
そのでき次第で提案するサービスを導入してもらえるか否かが決まると言っても過言ではないほど、企画書は重要な役割を担います。
提案内容ももちろん重要ですが、ほかにも重要なポイントがあることをご存知ですか?
それは「稟議書が通る提案」になっているかどうかです。これについてはある程度場数を踏んだディレクターでないと、気がつかないポイントかもしれません。
では、「稟議が通りやすい企画書」とはどんなものになるのでしょうか。
企画書が通るまでに1か月!そんな場合に考えられること
担当者から口頭でOKをもらっているにも関わらず、なかなか契約書にサインをもらえない……。社外向けの企画書をつくったことがあるディレクターの方は、こんな経験があるかもしれません。
サインをもらえない理由の多くが、「稟議書を通している」「上層部に確認してもらっている」、こんな答えだったのではないでしょうか。
稟議書とは
「稟議書(りんぎしょ)」とは、伺い書とも呼ばれ、会社や官公庁において承認を必要とする事項を申請し、決裁者に回す書類のことです。権限の低い人から高い人へと向けて回すのが通例であり、企業規模が大きくなれば承認者は多くなります。金額や重要度にもよりますが、社長に承認を求める場合もあります。
稟議の承認をするのが社長だけではない場合も
実はこの部分が非常に重要で、提案をする担当者が「どのくらいの決裁権をもっているか」ここを最初に見分ける嗅覚が必要です。
担当者には大抵、その人の一任だけでOKが出せる「予算」というものが決められています。通常の企業ではあまり聞きなれないかもしれませんが、広告を扱う部署がある場合には、そうした「広告予算」が決められているものです。
仮に100万円の企画を提案した担当者が50万円までの予算をもっていた場合、その担当者の一任ではOKが出せないため上長並び社長に「お願い」をするわけです。
これが「企画の稟議を通す」ということになります。
この稟議を通すのにかなりの時間を要することが多いのです。
担当者が役職者であれば稟議を通す相手は社長のみとなりますが、例えば決済できる予算をもたされていない担当者であった場合には、100万円の予算を決済できる立場の人間まで稟議を回さなければなりません。
担当者→リーダー→係長→課長→部長→取締役→社長
こんな図式も珍しくありません。
企業規模や企画金額が大きいほど稟議を通すのに時間がかかる
稟議自体が「プレゼン」である
経験したことがある方はおわかりになると思いますが、稟議書はいわば「プレゼン」のようなもの。現場を知らない決裁者に対する、「こういったメリットがあり売上に貢献できるため、案を採用してください」という書面です。
何度も提案を繰り返さないといけなかったり、また、多忙を極める決裁者からの返事を待つ時間も多くなったりします。
そこで意気消沈してしまう担当者の方もいたりします。また、企画や提案は時間が経つにつれて劣化してしまうもの。鉄は熱いうちに打つことが非常に重要です。
私もそんな場面に何度も直面しました。そして私なりの方法を見出すことで、いくつもの場面を打破してきました。
稟議を通す時間を少しでも短縮するためにできること
もちろん、クライアント(他社)の稟議書を代わりに作成する訳にはいきません。
では私はどうしたかというと、担当者が稟議を通しやすいよう、クライアントの担当者目線になった企画書をあらかじめ作成することでした。
担当者の負担をできるだけ軽減する、それが企画を通すためのポイントなのです。
加えてそうした心づかいはクライアントの心を動かします。「それであれば自分もがんばって稟議を通そう」と力を注いでくれるものです。
プロジェクトは提案の段階から、クライアントに寄り添っていくこと。これを忘れないようにしましょう。
ひとつのチームであるとの認識をもっていくことで、物事がスムーズに進みます。
ここだけは押さえておきたい「稟議を通す企画書」の基本
稟議を通す企画書はどんな内容を網羅していれば良いか、ポイントを挙げておきたいと思います。
また、
・提案が自社(自分)目線になっていないか(サービスのメリットばかりを打ち出していないか)
・きちんとクライアント目線から見たメリット(オファー)を打ち出せているか
この点に留意することも大切です。
企画や製品のプレゼンには、とにかく「どんなにすごいか」という自社目線の内容を盛り込みがちです。しかし、決裁者は「どのような売上や効果を得られるか」ということを見ています。
決まっていた予算の10倍の提案を通した、「実際の行程」
これは以前の私の実際にあった経験談なのですが、健康美容系での飲料メーカー様が、はじめての健康食品参入で、すでに方向性と予算(100万ほど)が決まっており、既にあるポータルサイトのテコ入れをして欲しいというご相談がありました。
そのサプリメントは、市場ではあまり見かけないニッチな美容成分を配合。健康美容業界の長い私でも、初めて出会う成分でした。
ご存知の通り健康食品は薬ではありませんので、どんなに効果が期待できたとしても、それを文字として伝える方法が限られています。
「これではこの製品の良さが伝わらない。サイトをテコ入れしただけではきっと製品を実際に取り扱ってくれるサロンは少ないだろう」
そう私は確信しました。
そこで、予定されていたビジネスモデルを1から見直したうえで新しい販売戦略を提案したのです。その見積は1000万円以上。相談いただいた担当者レベルでは予算取りができない金額でした。
その提案をぜひとも採用したいと、担当者は上層部に掛け合うことに。そう、ここで稟議書を上げる必要性が出てきたのです。ですが、1000万円超えの稟議はなかなか通るものではありません。
そこで、社長決裁まで5段階くらいの稟議を通すために、担当者の手をわずらわせることのないよう、上層部がOKと言いやすい資料を私がつくることにしたのです。
提案は食べ物と同じ。時間とともに“冷える”もの
「鉄は熱いうちに打て」
そんな言葉があるように、提案も担当者の想いが熱いうちに通すこと。
これをぜひ覚えておいてください。
例えばみなさんがある商品を手に取って、とても素敵で欲しいと思ったとしましょう。
その場では何としてでも手に入れたい、けれどたまたまお財布のなかにあるお金が足りなかったらどうでしょうか。
もう一度出直して、その商品を買う方ももちろんいるでしょう。ですが100人中100人が同じように行動するわけではありません。熱が冷めて「また今度」と思っているうちに、感動の記憶が薄れていく人もいます。
提案も同じことが言えます。感動という熱が次第に冷えてしまうものです。
特に時間と労力のかかる稟議を通すという行程は、その熱を冷ましやすいという側面もあります。
普段の業務の合間に行わなければならない、イレギュラーな作業に時間を費やすのですから。
担当者の負担をできるだけ減らしてあげること。
それを実現するためには、稟議書に添付するだけで十分な企画書、つまり提案の場に同席していなかった役職者にもしっかりと要件の伝わる企画書をつくることが重要です。
提案が通るまでには、実に1か月以上の時間が掛かりましたが、社長決裁がおり、無事に私はその提案を受注することができました。
企画者、提案者とは「相手の目線で物事を見る」人であるということを、常に忘れないでください。
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