記事は"パッ"とカンタンに出来上がらないよ。Webディレクターが知っておきたいライターのこと
はじめに
クリエイターに特化したビジネス書があってもいいじゃないか――。
仕事に関わる技術やキャリアだけでなく、疲れが取れる休み方、遊び方などの体調管理など。人生を効率的に・豊かに過ごすための「生活術」や「仕事術」をクリエイターの実例を通じてお伝えしていきます。
Webディレクターとしてモノづくりに携わると、必然的に多くのクリエイターの方々と関わることになります。そのなかでも比較的、ライターの方とのつながりは多いのではないでしょうか。
しかし、原稿の指示出しが難しかったり、イメージしていた原稿が上がってこなかったりと、ライティングのディレクションに悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。
Webディレクターとして、ライターの方とどのように向き合っていけば良いのでしょうか。
それを知るには、まず「ライターがどんなことをディレクターに求めているのか」を理解することです。
原稿を執筆する際にどのような工程を踏んでいるのか、またそのなかで発生するであろう「大変な部分」だけでなく、どのようなことがモチベーションとなるのかといったことを理解していると、適切なアドバイスができるものです。
まずWebライターがどのように記事を執筆しているのか理解する
Webライターは1本の記事を執筆するまでにどのような行程を踏んでいるのか。
ここを理解できていないWebディレクターが多いように思います。
人と人との付き合い方すべてにおいて言えることですが、まずは相手を理解すること。
そこができていないと、すれ違いや齟齬が生まれる要因となります。
Webライターは1本の記事が出来上がるまでに思った以上に多くの行程を踏み、丁寧にしっかりとした文章をつくり上げています。
その工程を理解したうえで、どのような指示出しをすればWebライターが記事を書きやすいのかを考えること、そして“経験を共有しながら共創すること” が大切です。
記事をつくり上げるまでの行程(SEOを意識したライティングの場合
※現場によって、ディレクターとライター、校正者との分担作業となる場合もあります。
1.競合調査
記事で紹介する商材をネットで検索した際に、どのようなサイトが上位にくるのか、またそのなかでも競合と思われる商品やサービスがどのような戦略を打ち出しているのかを探ります。
「市場調査」が自社製品やサービスに関わる市場や顧客ニーズの動向を探るためのものであるのに対し、「競合調査」の対象は自社の商品やサービスのライバルになり得る競合他社であり、自社の立ち位置や強みを明確にすることが目的です。
記事の難易度や規模によっては、「4C分析」や「SWOT分析」などのフレームワークを用いることもあります。
2.KW(キーワード)選定
SEOを意識した記事の場合には、その記事がどんなKWで上位表示を狙うのか、といった選定が含まれることがあります。
その場合、検索ボリュームを調べ、KWを決定します(調べるためのツールはまちまちですが、「ウーバーサジェスト」や「エイチレフス」などが使用されます)。
上位表示を狙うKWは、クライアントから指定される場合もあります。
3.タイトルの決定
ここでは「ラッコツールズ」、「ルリコ」などの無料ツールを使う場合が多いです。
そこから、どのようなタイトルが検索上位に上がっているか(上がりやすいのか)ニーズを把握し、タイトルを作成します。
4.構成作成
構成をつくるときも「ラッコツールズ」、「ルリコ」などを使って上位にある見出しからニーズを探り、構成をつくります。こちらも主にSEOを意識した記事作成の場合です。
5.記事執筆
構成をもとにしてライティングを開始します。
6.コピペチェック
コピペチェックとは、該当記事がほかの記事のコピー&ペーストでつくられていないかを調べることです。文章が完全に一致する場合だけでなく、語順や語尾を変えただけの場合でも、コピペとみなされるのが一般的です。
コピペは著作権侵害で訴えられる恐れもあり、Googleからペナルティを受ける可能性もあるので必ずこの行程を挟みます。
チェックを行うツールは有料のものから無料のものまでいくつかありますが、CCD(CopyContentDirector)を使用している方が多いようです。
注意しなければならない点がひとつ。それはコピペ率をすべての記事に対して一律に設定して評価しないということです。
例えば「ブロッコリーの栄養成分」や「パソコンやスマホのスペック情報」など、主にオリジナルにしようがないコンテキストで構成される記事も存在します。
コピペ率をチェックする目的は「著作権侵害を避けること」と「Googleからのペナルティを避ける(ミラーコンテンツとみなされない)こと」です。
その本質を見誤って、余計な負荷をライターにかけないようにしましょう。
7.推敲
推敲の仕方はライターにより本当にさまざまです。
数回読み返して校正までして提出くださるライターもいますし、声に出して読み上げるライターもいます。声に出して音読することで客観的に文章を判断することができるそうです。
8.修正
初稿を提出したあと、クライアントもしくはディレクターからのフィードバックが入った文章が戻され、その内容に従って文章を修正します。
9.校正、校閲
通常、この行程は専門の方が行うことも多いですが、最近ではライターが納品する段階でこの行程まで行っていることがあります。
目視での確認だけでなく、「文賢(ぶんけん)」などの文章作成支援ツールを使っているライターもいます。
また、GoogleドキュメントやWordなどは、文章を執筆している段階で間違った言い回しに対してアラートを出してくれるので便利です。
10.納品(入稿)
ここまでの行程を踏んでようやくひとつの記事が完成します。
依頼する側は「記事を書くだけ」と思っている方も多いかもしれませんが、実際にはひとつの文章を書き上げるのにこれだけの工程を踏んでいるのです。
正直、尊敬しかありません……。
ここではSEOライティングの行程について触れました。特にそうした指示のない場合のライティングについても、Web上で展開されるコンテンツライティングの場合には、ほぼ同じような行程で記事が制作されることが多いです。
タイプ別ライターとの付き合い方
1.駆け出しWebライターさん
定義ははっきりと決まっていませんが、概ねWebライターを始めてから3か月未満の方をイメージしています。全くの未経験から始められた方もいますが、「ライティングスクールを卒業した」という方も最近は多く見かけます。「#駆け出しライター」とSNSでタグをつけている方も多いです。
学ぶことに意欲的な方が多いので、できるだけ丁寧なフィードバックをしてあげると良いですね。
2.取材ライターさん
Webライティングを長く経験しているライターさんのなかでも、「取材は苦手」という方もいらっしゃいます。前述したように、Webコンテンツのライティングが多くの調査やエビデンスからつくり上げられるのに対し、相手(取材対象者)のいる取材では、その場その場での言葉や会話の機転をきかせる脳力も必要になってきます。文章が出来上がるまでの行程が全くと言っていいほど違うのです。
取材をする場合には、まず取材対象者に関する膨大な量の情報を収集し、そこから基本となる取材項目を作成して、事前にライターさんに共有しておくとスムーズです。そうした事前の資料を用意してあげることで、ライターさんの手間を省けます。
3.専門ライターさん
最近よく見かけるようになった「薬機法ライティング」「メディカルライティング」など、ある特定の分野に特化したライターさんや、自身の得意分野に絞って「〇〇専門」といった肩書きをもつライターさんです。
さすが専門ライターさんだけあり、知識量が豊富でこちらが勉強させていただく機会もしばしば。
情報を調べながら執筆するのではなく、自身がもつ知識を元に記事をつくり上げるタイプの方や、独自のネットワークをもっている方も多いので、構成の段階でディレクターが準備することも少なくなるでしょう
4.ディレクター経験のあるライターさん
これは私の失敗談なのですが、ディレクター=ライティング経験がある(ライターからのスキルアップとしてディレクターになった)と思い込んでしまうことがあります。ですがWebディレクターの経歴や実務はさまざまであり、その枠に収まりません。
経験した開発の現場によって、ゴリゴリにシステム構築の仕様と向き合ってきた方や、アートディレクションを主に行ってきた方など、もつスキルはそれぞれです。
そこをひとつの枠に当てはめて考えてしまうと、思わぬトラブルの原因となり得ますので注意しましょう。
逆に、同じような環境を経てきた方とは、意外な話題で意気投合したりすることも。
アサインした際に「ちょっとワクワク、ちょっとドキドキ」そんな気持ちになるのが「ディレクター経験のあるライターさん」かもしれません。
ライター育成はディレクターとしての成長につながる
よく「習うより慣れよ」と言いますが、私は「習うより教えよ」がより自身のスキルアップにつながり、成長できる行程だと感じています。
ディレクター経験が2~3年を超えた中級レベルは、スキルや「肌感」で身についた経験値などが増えてきたタイミングかと思います。
そのくらいになるとある程度自分だけでプロジェクトを切り盛りできるようになり、ある程度の実務を自分でこなせるようになっているものです。
ですが、部下ができていざ教育しようとすると、なかなか上手くいかない場面も出てきます。それは「肌感や景観を言語化するスキルが身についていないから」です。
ほかの人に物事を教える際には、間違ったことを言う訳にはいきませんから、必然的に「アウトプット=情報の再整理」をするわけです。
それによって、しっかりと土台が固まっていなかったことを自覚し、より正確な「インプット」をし直すのですね。
以上のことを経験した人はわかると思いますが、この過程で得た知識は大きなスキルアップにつながります。
「コミュニケーションロス」という言葉もあり、ここに時間を割かないディレクターも正直多くいますが、クリエイターを「育成すること」はその分だけ自身が「成長すること」だと覚えておいてください。
きっと、数年後の自分自身に「ありがとう」と感謝されること間違いないですよ。
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