WebディレクターはGive&Takeの折衷案がキホン?「恩を売る交渉術」とは
はじめに
全部読むと"集客できる"Webサイトが作れる――。そんな記事を目指して。
成功しているクリエイターの実例を通じて、クリエイターの考え方や技術についての知識をお伝えしていきます。
Webサイト制作において生じがちな問題は、「ステークホルダー間の認識のズレ」です。それは社内外問わず発生するものであり、Webディレクターとしては常に齟齬が起きないように、間を取り持つ必要があります。たとえば、顧客の見積もりや対応要件、営業の提案・契約内容などに認識のズレがあるとトラブルの要因になりかねません。
そうした顧客折衝における絶妙なバランス感覚が求められるWebサイト制作のディレクションにおいては、お互いの主張ばかりすると制作進行が滞ることもあります。そのため、折衷案を提案する技量が求められます。時にGive&Takeの考えに基づく「恩を売る交渉術」が、ステークホルダー間においては緩衝材となり得るのです。
◆Webディレクターが言ってはいけない「できません」という否定
Webサイト制作にはさまざまな要件があるため、どのプロジェクトでも少なからずステークホルダー間で認識のズレが生じます。たとえば、Webサイト制作を100万円で請け負う契約をしたとしましょう。その際に注意すべきは、顧客が100万円分の作業要件を正確に把握できていないケースもあることです。100万円の案件にもかかわらず、200万円分の対応を強いられることも実際にあります。
顧客が支払いに対してより良い成果物を求めるのは当然なので、その主張に対しても一定の理解を示すことは大切です。しかし、顧客の要求をすべて飲んでいたら、制作側はパンクしてしまったり、大赤字になってしまったりします。とはいえ、顧客の要望に対して「それはできません」とだけの否定は、やってはいけないことです。できるならば、「現在の予算だと、その対応は難しい」と伝えると良いでしょう。
要望を「無理です」という一言で断るのではなく、「追加で費用をいただければこの要件の範囲内での対応はできます」というコミュニケーションを取るのはWebディレクターの基本です。要望を叶えるには至らないけど、代替案としてより簡易的な対応・追加の提案をすると顧客の納得感も違ってくるでしょう。単に顧客の要望を否定して心証を悪くするのではなく、要望を聞いたうえで自分たち側の事情も踏まえた折衷案を提案できるのが理想的です。
◆顧客の求める「スピード感」の重視で高まる信頼
折衷案の内容としては、「その要望は対応できるので無償でやります。しかし、もう一方の対応は難しいので追加費用がかかりますけど、いかがでしょうか?」など明確にできるラインとできないラインの線引きをすることが大切です。エンジニアやコーダーらに動いてもらう必要がある場合は、きちんと追加で費用をもらうことを基本としています。
一方でバナーを作ったり、コーディング修正をしたり、画像を差し替えたりなど、軽微な対応は自分で対応することもあります。少しオーバー気味に「大変だけどやります」というコミュニケーションを取って、顧客の要望を飲めるところは飲みつつ、交渉材料的な貸しを作ることもWebディレクターとしての処世術です。「Give&Take」の関係性を築くことはよくあります。
後は作業要件も重要ですが、「スピード感の意識」が大切です。顧客がすぐに対応してほしいという要望については、通常なら数日の対応期間をいただくところを、「明日までにやります」と伝えて自分でやる時もあります。顧客の譲れないことの1つに対応の優先度はあると思うので、求めるスピード感には気を配っています。そうした、「持ちつ持たれつ」の関係性で時に要望を飲むことも重要です。ただ、その場合は自分の負荷がかかることも多いんですがね(笑)。
◆営業ら社内メンバーとも重要なGive&Takeの関係性
顧客との交渉も重要ですが、社内の営業らとしっかりコンセンサスを取ることも同様に重要です。たとえば、制作側をあまり顧みず、営業判断で値引きがされているプロジェクトもありました。安い要件で契約がなされた事実は仕方がないことなので、「要件の範囲以上のことに関して顧客から要望があったら、間に入ってください」と営業には伝えています。
顧客だけでなく、対営業においても相手の要求を飲みつつ、自分の提案もセットで提示することが不可欠です。「自分もやるから、この条件になったら対応してね」というGive&Takeの関係性は常に意識しています。Webディレクターは、誰に対しても決めごとについて交渉し、共通認識を持ち、納得をしたうえでそれぞれの役割に徹することができるように仕向けることが仕事です。なので、そうした交渉における凡事徹底は絶対に疎かにしないことをポリシーとしています。
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