「やりたい仕事」VS.「素敵な環境」 キャリア選択でもしも迷ったら【Webデザイナーのキャリアを考える】
はじめに
クリエイターに特化したビジネス書があってもいいじゃないか――。
仕事に関わる技術やキャリアだけでなく、疲れが取れる休み方、遊び方などの体調管理など。人生を効率的に・豊かに過ごすための「生活術」や「仕事術」をクリエイターの実例を通じてお伝えしていきます。
何事においてもターニングポイントに直面した際には、まずは自身のタイプ(適性)を見極める必要があります。そのうえで、自分の適性に即した方法を選択することをおすすめします。
当たり前のようにも聞こえてしまいますが、そこを勘違いしてしまうと大きな散財にもつながりかねませんので、相当な大金持ちではないのなら、失敗しながら覚えるというのは慎重になるべきと考えています。
この記事ではWebデザイナーのタイプやキャリアを歩むうえで大切にしたいことなど解説していきたいと思います。
これまでタスクベースでキャリアを選択。そして現在、思うこと
転職2回、そして独立。まずはこれまでのキャリアをご紹介
まず、私個人のこれまでのキャリアを簡単にご説明しようと思います。
【高校卒業~デザイン制作会社】
高校卒業後は美術大学向けの浪人生をしながら、デザインの制作会社でアルバイトをしていました。また、夜には別の仕事をするなどかなりのハードワークを続けていました。
というのも、母が長年癌との闘病で入院していたため、家には予備校のお金を捻出する資金もなく、また、東京芸術大学という当時40倍とも言われていた国立大学しか選択肢がなかったからです。「何とか自分の力で有名なアーティストになってやるんだ」という気持ちで、過酷な生活を続けていました。
そんな中、アルバイト先の会社から正社員のお話をいただき、トータル4年ほどそこでお世話になっていました。仕事をするなかで次第にCMなどの案件にも携わりたいと思うようになり、キャリアップを目指し転職を決意します。
【2社目~3社目~会社立ち上げ】
倍率100倍の選考のなか、おもしろ枠採用で2社目に内定をいただきました。すごく個性的な方が集まる「クリエイティブど真ん中」な会社で、過酷でしたが、とても充実した日々を過ごせたと感じています。そこでは広告賞に参画するようなお仕事にも携わらせていただきました。
数年その会社で働いたあとは、「立ち上げメンバー募集」ということでお声がけいただいた会社に転職。そして、今度は自分で会社(「株式会社ポイント」)を立ち上げ、経営することになります。
おおまかな私のキャリアはこういった内容になります。お世辞にもスタイリッシュなキャリアとは言えないのですが、「波乱万丈だね」と言っていただくことが多いです。今では、すごく良い経験をさせていただいたなと、諸先輩方にはとても感謝しています。
これまでのキャリアを振り返り、転職について感じること
キャリアの選択基準として、これまで新たな挑戦に向けたタスクベースで判断してきたように思います。しかし振り返ってみると、必ずしもおすすめできる方法ではないと感じています。
もしやりたい仕事がほかにあったとしても、転職せずに案件として携われるケースも多いです。今の環境が活気に溢れていて、いい人に囲まれていると感じるのであれば、タスクよりも環境を優先することをおすすめします。
「やりたい仕事」は案件を獲得することで解消されますが、「チーム」というのはさまざまな要素が奇跡的に合わさって成り立つものなので個人の力で変革を起こすのがとても難しいからです。
独立や会社経営について思うこと
独立は基本的におすすめしていません。というのも、自分の能力以外にも、社会問題、人間関係、マーケットの成熟タイミングなど、個人では抗えない大きな課題とも向き合う必要があるからです。
事業が軌道に乗ってきたとしても、あらゆる方向から思わぬアクシデントが会社に目掛けて飛んできます。会社に属していれば専任担当者の方が守ってくれるケースも多いですが、独立してしまうと自分で注意する必要があり、思った以上に何でもやらなくてはなりません。
しかし、独立や会社経営をするのに向いている唯一の属性があるとも思っています。それは、「ゼネラリスト型」。言い換えれば、「何でもできる人」のことです。
転職や独立の岐路に立っている方は、自身の「タイプ」を振り返ることが大切
転職などの重要なターニングポイントにおいて、自身がどのタイプのデザイナーか把握しておくことはとても大切です。私個人の見解になってしまいますが、Webデザイナーには大きく「オフェンス型」「ディフェンス型」「ゼネラリスト型」の3タイプがあると思っています。
オフェンス型
学生時代から部活などで中心的存在としてバリバリやってきたタイプです。体制づくりなどに関心を寄せていけると、大きなプロジェクトも扱えるようになります。フロントワークできる環境で長く働くことをおすすめします。
【転職の岐路に立っている方へ】
ディフェンス型
学生時代から、縁の下の力持ち的な存在として活躍してきたタイプで、フロントマンの助けになり続けることで、自分自身のよさも引き出されます。いずれは教育担当やクライアントとの調整役として活躍できるタイプでもあり、尊敬できる上司のいる環境で、長く働くことをおすすめします。
【転職の岐路に立っている方へ】
ゼネラリスト型
学生時代からなんでもこなせて、人気者としていつもトップを走ってきたようなタイプです。どんなことにも一定以上の結果が出せるゼネラリスト型の人は、大きな責任をもったほうが伸びると思います。
【転職(独立)の岐路に立っている方へ】
別職種・業種での経験はWebデザインの仕事に活きる
別の職種・業種からクリエイティブ職へキャリアチェンジするのは、とても良いことだと考えています。というのも、それまでの人生経験が大いに役立つからです。
アーティスティックに走り過ぎてしまうと、時代の流れや人の気持ちを汲めず、自己満足になってしまいます。色々な経験は客観性を養ううえですごく大切なファクターなので、「キャリアチェンジした」という時点で、クリエイターとして第一段階をクリアしたと考えても良いと思います。
Webデザイナーにキャリアチェンジし、自分と周囲の経験やスキルを比較して引け目を感じている人もいるかもしれません。足りないスキルは計画的にコツコツ練習や実践を繰り返せば必ず身につきます。安心して日々精進していただければと思います。
人生経験と客観的な視点があると成長が早い
株式会社ポイントでの例になりますが、別の職種からキャリアチェンジして入社してきた方は、それまでの人生経験を強みに短い期間でさまざまな壁を突き破って活躍しているケースが多いです。みなさん共通してクリエイティブにおいて重要な「客観的視点」をもっていて、個人的に教えやすいという印象もあります。
その中でも、特に活躍した“レジェンド社員”について、ご紹介します。
実績以上の魅力があり採用したレジェンド社員
レジェンド社員の方は、社会人2年目のときに株式会社ポイントの求人に応募してくれたのですが、前職はハードウェアエンジニアの仕事をしていて、デザインは未経験でした。ただ、ハードウェアの知見はマークアップに馴染む基礎につながると思い、ポートフォリオなしで会うことにしました。
面接当日、アルバイトの夜勤明けだったのか、すごくつかれた表情をしていました。また、話を聞くと学生時代は苦学生だったとのことで、忍耐力はとても高いのではないかという印象をもちました。
同席していた面接官は私が不採用にすると思い、話を早めに切り上げようとしていたようです。なので、私が「左利きだから2次に進んでください」と彼にお伝えしたときには驚いていました。
そのとき社内には左利きの人材がいなかったことから、私は「苦学生、エンジニア気質、左利き」という3つのファクターが揃ったと思ったのです。3次も通過し、見事内定を勝ち得ました。
おそらく普通の選考基準ではなかったかもしれません。しかし、やはり忍耐力やハードウェアエンジニアの経験が活きる場面が非常に多く、2年目にはクライアントから信頼してもらえるほど成長し、素晴らしい功績を残し続けてくれました。
「ブレナイ軸足」が転機になる
ここまでWebデザイナーのタイプや、キャリアを築くうえでの注意点などご紹介してきました。転職や独立などさまざまな選択肢がありますが、やはり周囲の人に恵まれていると感じる部分が多いのなら、慎重になったほうが良いと思います。
そのうえで覚悟を決めたのであれば、まずは「ブレナイ軸足」を大切にしていきましょう。「ブレナイ軸足」というのは、「自分が詳しい特定のジャンル」や「30分以上熱く語れる趣味」などです。必ずしもスキルを重んじる必要はないと考えています。
軸足をもって行動すると好転する機会が必ずくると思いますので、陰ながら応援したいと思います!
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