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「THE FIRST SLAM DUNK」の感想をクリエイティブ視点から語ってみた|編集部雑談会#3

はじめに

こんにちは、HIGH-FIVE編集部です。
普段はクリエイターさんへ向けて仕事や生活のお役立ち情報や、転職エージェントサービスに関する情報発信を行っています!

そんな編集部メンバーで月に1回、noteのお題に参加したり、最近気になるあんなことやこんなこと……について雑談したりするこの時間。少しでも皆様のお仕事のヒントや息抜きになるようなことが発信できたらなと思っています。

note雑談会3回目は、12月に公開された映画「THE FIRST SLAM DUNK」を私達らしくゆるーくクリエイティブ目線で語ってみようというテーマです!

▼メンバー紹介
〇編集長アベについて
〇編集部ユウについて
〇編集部カナについて

HIGH-FIVE編集部

※しっかりネタバレを含みますのでご注意ください※

クリエイティブ視点でスラダンをゆるーく語る

かな 先日、私達クリーク・アンド・リバー社が東映アニメーション様の採用イベントに関わらせていただきました。その関係で映画「THE FIRST SLAM DUNK」のプロデューサー・小池隆太さんに公開前にインタビューをさせていただいたんですよね!その後皆様作品は……

あ/ゆ すぐ見にいきました!!

かな ですよね!今回は実際の作品を見た感想……私たちのお仕事(クリエイター専門の転職エージェント)に寄せてクリエイティブ目線での感想をゆるーく語っていけたらなと思っています!先に私とゆうさんの感想を話してから、スラダンオタクの編集長から語ってもらいましょうか(笑)

ゆう クリエイターっぽい切り口で感想を話せばいいんですよね、頑張ります!まずは、とにかく一個一個の作り込みがすごいなと思いました。最初はあのぬるぬるした動きになかなか慣れなかったんですけど……途中から実写を見ているような感覚になってきて。モーションキャプチャとかで実際の人の動きを取っているんだと思うんですけど、マッチしすぎて今観ているのはアニメなのか実写なのか……?みたいな、次元がバグる感覚がありました(笑)

あとは音響の、例えばバスケのボールがてんてんてんっ………て転がるようなリアルな音とかも感動しました。ボールがスクリーンの右側に転がっていったシーンがあったんですけど、本当に空間の右側でボールが跳ねた音がして、映画館全員が思わず右に振り向いたんですよ!そのくらい臨場感のある音響だったからこそ、映画館で試合を見ているかのような没入感があったんだろうなと思います。

あべ うんうん。

ゆう あとこれかなちゃんから、ここまでみているのゆうさんくらいですよって言われたんですが……(笑)沖縄弁がリアルですごいなと思って。あまりに芝居がリアルすぎて、沖縄出身の人連れてきたのかなって思ってたんです。でもクレジット見ていると、ソータくん役の声優さんが仲良い後輩の推しで(笑)たまたま彼が大阪出身なことを知ってたから、ほえ~沖縄ネイティブじゃないのにすご~と思ったら、その直後に「方言指導」って出てきて。そこに載っていたのが、沖縄出身の声優さんだったんですよ!

かな 声優事情詳しすぎる……!!!

ゆう (笑)ご自身も出演されていたので、方言指導のためにというよりは、出演ついでに監修みたいな感じだったかもしれないですけどね。大河ドラマだったりしたら方言指導ってよくあることだと思うんですけど、なかなかアニメで見たことないなと思って。

めちゃくちゃ田舎が舞台のアニメとかなら分かるんですけど、スラダンって別に沖縄がメインの舞台ではないですし。それでも、リョーちんのエピソードに説得力を持たせるためにわざわざ方言指導を入れたのかなと思って、私はグッときました。神は細部に宿る、じゃないですが、すごく細部にまで職人魂を感じた作品だったなというのが全体的な印象でした。

あべ いいですね~。さっきCGの話がでていましたが、モーションキャプチャで撮って本物の人間の動きを入れてるんですけど、「本物の動き」って絵と合わせると逆に臨場感が無いんですって。でも大げさにやりすぎても行き過ぎちゃう。その絶妙なラインを先生が狙って作っているんですって。だからさっきの感想になるんだなって思いました。

ゆう そうそう、不思議な感覚でした~

あべ あとこれTwitterで見た話なんですけど、映画館中がしーんとなっている場面で、8歳くらいの女の子が「入れ!!」って叫んだそうなんですよ。静かな映画館に響き渡って、逆にそれが臨場感で鳥肌が立ったって言ってましたね。

ゆう あのシーンの没入感すごかったですもんね!みんな大人だから黙ってたけど、気持ちは分かるなあ~(笑)

かな 私はスラダンを今まで見たことなくて、何の知識も無い状態で行ったんですけど……とにかく面白かった!あと、映画を見ながらここまで色々考えたのは初めてでしたね!このシーンってあそこに繋がっていたんだ!とか、一本のストーリーがかなり書き込まれているんだなっていうことを心から感じました。終わってからも物語が続いている感覚ですね。

あべ 分かる。僕なんていまだに引きずっていますからね!(笑)Kさん(HIGH-FIVE転職エージェントのエース)も見に行くって言ってましたよ!!!

ゆう あの全く映画を見ないKさんが!!! 

かな そういう人にまでうわさが広がって、「行きたい!」に繋がるってすごいことですよね!

"THE FIRST"に込められた井上先生の想い

ラス1のポスターをget!( photo by あべ )

あべ ちなみにお二人は「THE FIRST」ってタイトル、どんな意味かご存知です?実はそこにいろんな意味が込められてるみたいですよ。

ゆう それめちゃくちゃ気になっていたんですよ。Twitterのスラダンオタクが"「THE FIRST」っていう言葉の意味が分かった瞬間に泣けた~"って言ってて。

あべ そうそう。もともと漫画があったけど、その続きじゃないよってことを意味する「THE FIRST」。初めて見る人へっていう意味の「THE FIRST」。一歩踏み出すことへの勇気っていう意味の「THE FIRST」。があるらしいですよ!

かな そんな沢山の意味があったんですね~~~!

ゆう スラダン本編の主人公って桜木じゃないですか。でもそれよりも前に「宮城」っていうキャラのストーリーがあったよっていう、"桜木がいるスラダン"の前のストーリーを描くから「THE FIRST」なのかと思ってました。

あべ なるほどね!いやでもこれ、色々な解釈がありますよね。それも一理ありそうだな……ちなみに、うちの息子もはまっちゃって(笑)漫画引っ張り出してきて読みだしてます!

ゆう 私も漫画読みたくなりました(笑)アニメでやってた頃って、私が小学生の時なんですよ。あの時はただヤンキーがバスケに出会ってサクセスしていく感動的な漫画、っていうイメージだったんです。

でも改めて大人の視点からみると、別のところで感動するというか……例えば年齢にそぐわない、おそらく家族のために背伸びしていたソータくんの良い子さとか、リョーちんのやり場のない苦しい想いとか、お母さんの複雑な気持ちとか、王道サクセスストーリーだけじゃない繊細な感情の揺れみたいなものを、ちゃんとこの歳になって味わうことができて。それを作り込まれたあの作画で、じっくり2時間半見せてもらえたっていうのが、ああめちゃくちゃ有難いなって。

あべ 井上先生も、当時は勝ち負けしか描けなかったとか、本人がそこまで考えが及ばなかったシーンもあるそうですよ!ここにはこんな意図がある、みたいなのは後からでてきた部分もあるみたいです。

ゆう え!そうなんだ!オタクたちが、漫画読み返したらリストバンドつけてたりとか、最初から計算されてたんだって盛り上がっていたんですけど、、きっと先生も無意識に繋げていたんでしょうね。

かな まさに天才ですね……

20年来のオタクが語る今回のテーマ、「依存からの脱却」とは

部屋に飾ってます。( photo by ゆう )

かな ちょっとさっきの「THE FIRST」に話が戻るんですけど、プロデューサーさんの小池さんも言っていた通り、今回は初めて見る人にも楽しんでもらえるようにとか、いままでのものに固執しすぎないみたい想いが(制作側で)あったと思うのですが……じゃあずっとファンだったあべさんからみて、この映画はどうだったのかなってすごく気になりました。

ゆう たしかに、気になる!!

あべ そうですね~。今回は僕の場合、コンセプトが刺さりました!クリエイティブでもコンセプトってめちゃくちゃ重要じゃないですか。
「THE FIRST」が意味する"一歩踏み出す勇気"というコンセプトと、映画のストーリーがしっかり繋がっていたっていうことが分かった瞬間が一番嬉しかったですね!もともと僕は映画を見ながら、"依存からの脱却・成長"がテーマになっているんじゃないかなって思ってたんですよ。

ゆう おお!そのココロは?

あべ そのココロは……例えば、赤木は河田っていうライバルと自分を比較してしまっている。流川はセルフィッシュで我が強い。三井は過去の自分の過ちを後悔している。宮城と宮城のお母さんは、お兄ちゃんの死を受け入れられない。みんな何かに囚われて(依存して)しまっているんです。で、さらにそこから相対するところで、沢北っていう絶対に負けたことがないキャラも出てきます。

かな あの坊主のイケメンか!

あべ そうそう。で、彼は初めて負けることを知り、強くなりますよね。それと同じように、赤木は三井をキッカケで乗り越えられたり、流川も周りの仲間を使い始めて強くなっていったり、宮城も過程の中で少しずつ成長していきました。

そんな中、桜木はチームの太陽的な存在なんです。唯一彼は何かに依存しているわけではなく周りを引っ張っていく役目でしたよね。「俺は素人だからおめえらの価値観は分からないけど、やるしかねえんだろ」っていうように。

そんなことから分かるように今回のスラダンは、「THE FIRST」="一歩踏み出す"っていうコンセプトを一本太い軸として置いた、めちゃくちゃ深い話なんですよ。

井上先生の作品って"依存からの脱却"っていうのが強くでていると思ってるんですけど…例えば「リアル」とか「バガボンド」とかも。バガボンドの主人公・宮本武蔵も、もともと我が強いけどそうじゃないんだよって話にもっていくし。それが井上先生の描き方というか、作品全体のテーマなんだろうなって思います。

ゆう なるほどな~。

あべ で、それをどう描くかっていうのが今回の映画の課題になっていて。コンセプトを絵で伝えたいんだけど、なかなか先生が納得できるものができなくて(映画化までに)13年もかかったんだと思うんですよ(笑)

かな うんうん。

あべ アニメーターっていう自分じゃない人も一緒に作るから、今まで自分一人で描いてきた絵を言語化して「こう描いてほしい」と伝えなきゃいけないわけですよね。コンセプトが決まった、どう表現するか決まった、じゃあそれを誰にどう伝えて、皆で作っていくか。そこに時間がかかったんじゃないかなって思うんです。

先生もコメントで「今まで直感的に絵を書いてきたけど、それを言語化しなきゃいけないところがすごく大変だった」って仰っていましたね。

結局は井上先生が天才なんですよねっていう話

私はこれで10回くらい遊びました( photo by かな )

ゆう 私は「芸術」と「商業」って違うジャンルだと思ってるんですけど、たぶん井上先生は芸術側の人なんじゃないかなと今回思いました。アニメーターの人が生み出すクリエイティブと井上先生が生業としているクリエイティブって、意味合いがちょっと違うんだろうなって気がするんです。どちらが良い悪いではないので、そのへんの折り合いをつけていくのがアニメ化だと思うんですけど、、

「自分のクリエイティブにどこまでもこだわり抜く」って理想だしすごく良いことだけど、これを商業でやるのはものすごく大変なことだと思っていて。でも井上先生にはそれを許されるくらいの才能があるし、先生の理想の表現を忠実に再現できる人ってきっとこの世に数えるほどしかいなくて、、今回に関しては、先生ご本人が脚本なり原画なりやらないと生まれなかった作品だったのかなって。

あべ 井上先生って漫画家なので、普段は1枚の絵で表現しているじゃないですか。でもアニメって動くから、ここはこの表現!って決めたところから動いちゃうのがストレスなんだそうです。

ゆう そうだよなあ~~~。ただでさえ先生の絵って静止画でも動いて見えるから、実際に動かすってなったときにもかなりこだわりがあったんでしょうね。才能がありすぎるのも大変だなあ。

あべ でも今回やっていて良かったことは、絵が上手くなったことだとも仰ってましたよ!先ほど言ったように絵を言語化できるようになったり、3Dをやったことで今までにない角度とかまで想像して描かなくちゃだから、そういう広い視点で絵を描けるようになったって。

かな すごい!さらに上手くなっていくのか…なんか「動き」って、あの場に実際にいないと想像できないですよね普通。そこにどんな景色が広がってて、何が見えているかなんて。

ゆう 本当にね。井上先生もそうだけど、アニメーターの人ってそこがすごいよね。漫画のコマの間を考えて動きを付けていくわけで。それを生業としているんですもんね……

かな 他にありますか?語り足りないこと!

ゆう あとあれだね、オープニングのとこ!本当にすごかった!事前情報も全く無かったと思うんですけど、井上先生が描く絵の力がもう圧巻。あの色もついていない鉛筆描きだけの絵で、「湘北のやつらが帰ってきた!!」っていう湧き上がる感動がありました。絵の力を目立たせるためにその他を全部削るっていう、すごい表現。あれ誰が考えたんだろ~。

あべ あれも井上先生みたいですよ(笑)あの音楽自体にも制作に入っているらしくて。最初はベースから始まって、だんだん楽器が追加されていく設定にしてほしいってアーティストさんに要望出してたんですって。もう絵を描いてるときには頭の中で鳴っていたんでしょうね~。

かな なるほどな、、すべて計算されているんですね~~!頭良い…

あべ あとセリフ回しとか、言わせる人の設定もすごいよね!三井が悩んでいるときに声かけるのは安西先生、宮城には彩子さんがいる。その一言を、誰に言わせるかって重要じゃないですか。そこまで計算されているんですよね。絵を描いているときにそこまで考えてないと描けないですよ。

ゆう なるほどなあ~~~!…………ごめん、私たちばっかり話しているけどかなちゃん何かある?(笑)

かな いいんですいいんです!今日はお二人が話していただくための時間なんで!!

あ/ゆ (笑)

素晴らしいクリエイションを見た後に思うこと

20年来のファン、編集長のデスク ( photo by あべ )

あべ ネームの数もすごかったらしいですよ。今まで描いたことないくらい描いたって。それだけ描くから伏線をはれたり、ちゃんとつながりを作ったり、誰に何を言わせたら効果的とかできたのかな……ちょっと分かんないや、漫画描いたことないから(笑)

かな でもあれですよね、なんか2時間半が2時間半じゃなく感じましたよね。だって宮城を主人公としたストーリーを描く、メンバー一人一人のバックボーンを描く、見ている人が共感を持ているような暗い過去からの立ち上がりを描く、大切な一言で気持ちが切り替わる瞬間を描く、でバスケの試合も描く。あれ、これ全部ほんとに2時間半に詰まってた?って。

あべ 分かる、なんかストーリーいっぱいあったよね!

かな いっぱいありました!でも詰め込みすぎたなとか、足りなかったなとかないんですよ。すべてがちょうど良いバランスで。

ゆう ストーリーテラーだなあ。別に大冒険するわけじゃないし、ヒロアカみたいに個性が芽生えて……とかじゃないし(笑)、本当に普通の高校生の日常をここまでドラマティックに描いて、一つの試合を軸にすべて収束できるってめちゃくちゃすごいですよね。頭良くないとできないな~

あべ 過剰な演出とか演技とかは、今回はいらなかったんでしょうね。

ゆう まじでみんなに観てほしい!!

あべ なんかあれですよ、もう100億みえているみたいですよ!(※2023年1月時点)

かな 話が尽きませんね(笑)お二人の作品への愛がたーーーーーっぷり伝わりました!!お二人を含め、制作にかかわったみんなが井上先生の絵に魅了され、あの絵が大好きだからここまで熱くなれる。これってすごいことですよね。

今回を通してクリエイターさんをより尊敬したというか。すごいお仕事も沢山あるんだなって分かったので、もっともっと活躍できるクリエイターさんを増やしていきたい、お手伝いしていきたいと思いました!

あべ 本当ですね。僕らにもできることまだまだありますね!

かな 本日はこちらで以上です!ありがとうございました!

あ/ゆ ありがとうございました!!!


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