「非アド流入」増は認知拡大の証し?メディア運用担当は「量<質」の数値分析を!
はじめに
今回の執筆クリエイターは、LIFULL STORIES編集長田中めぐみさん。「しなきゃ、なんてない。」をコンセプトにした、既成概念にとらわれない多様な暮らし・人生を応援するメディア「LIFULL STORIES」を運営されています。
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全部読むと"集客できる"Webサイトが作れる――。そんな記事を目指して。
成功しているクリエイターの実例を通じて、クリエイターの考え方や技術についての知識をお伝えしていきます。
運用中のオウンドメディアを成長させることは、多くのメディア運用担当者にとって「頭痛の種」になっているかもしれません。日々、PVやUU、セッションなどの数値と向き合いながら、いろいろな施策を講じるにはタフさが求められます。特に数値が悪い時は、広告によってメディアへの流入数を劇的に増やす施策を選択するケースもあるでしょう。
しかし、広告流入だけに頼ったメディア運営は、短期的にPVやセッションを増やすうえでは有効だとしても、継続的にメディアを見てくれる“ファンの醸成”にはつながりにくい面もあります。そのため、当社が運用する「LIFULL STORIES」では「非アド(広告に頼らない)の流入」を重視としています。数値はあくまで「量<質」で計測することが基本です。
◆「LIFULL STORIES」について
本題に入る前に、私たちが運営する「LIFULL STORIES」について紹介します。「LIFULL STORIES」は株式会社LIFULLのオウンドメディアで、企業ブランディングの一貫として2018年12月に立ち上げました。
主要サービスの日本最大級の不動産・住宅情報サ-ビス「LIFULL HOME’S」やシニアの暮らしに寄り添う「LIFULL 介護」など複数事業をつなげるマスターブランド(※)「LIFULL」の社名認知獲得および企業姿勢を伝える目的で、運営しています。
(※)コーポレート・ブランド(アンブレラ・ブランド)の下に複数の事業や製品カテゴリーを展開していく戦略
「LIFULL STORIES」は「しなきゃ、なんてない。」がコンセプト。既成概念にとらわれない多様な暮らし・人生を応援するメディアとして、多様な生き方をする多様な人のインタビューやコラム記事を発信しています。
◆数値目標はいくつも追わずに軸を定めて限定的に
「LIFULL STORIES」のKPIは至ってシンプルです。具体的にはメディアの数値を「セッション数」で判断しており、さらに「日本で」かつ「非アド」であるという観点で測定をしています。それは「LIFULLの日本国内のブランド認知につなげる」というメディア運営の目的とリンクさせているからです。もちろん、さまざまな数値を見ることも大切かもしれませんが、いくつもの指標を追うことはせず、軸を定めたうえでのブレないメディア運営を意識しています。
また、「非アド」についての考えは過去の実績も踏まえて判断しています。以前に広告でプッシュし、メディアの認知の変化がどれくらいあるのかを計測したことがありました。その結果、広告で入ってきた流入は、ブランド認知には寄与していないという結論に至りました。そのため、短期的に広告で数値を伸ばすのではなく、オーガニック流入による「ブランドやメディアに共感しているユーザー」を追うことに専念しています。「量<質のセッション」を重視する考えです。
メディアは定常的に数字を伸ばしていくのが理想だと言えます。時に広告による集中投下でメディアの数値増を期待するケースもあるはずです。しかし、そうしたやり方はメディアの成長段階ではあまりおすすめしません。仮に広告に予算を投下した場合でも、そこからいかにファンの定着、認知の拡大につなげられたのかに着目すると良いかもしれません。
◆非アド流入につながる広告枠はプッシュ型よりプル型
メディア運営で広告費を使う場合は、非アド流入につながるかという観点で広告枠を選定しています。いわゆるディスプレイ広告などにお金をかけていません。広告枠に表示させてユーザーの目に触れるように仕向けるプッシュ型ではなく、親和性のある情報メディアから「内容が気になる」という心理を引き出すプル型の広告を出稿しています。
そのため、広告媒体としてコミュニティを抱えているかどうかが、「LIFULL STORIES」の広告出稿の1つの判断基準となります。たとえば、「はてなブックマーク」は出稿先の1つです。はてなブックマークは広告枠からの流入もありますが、ブックマークして「あとで読む」という機能もあり、ユーザーの興味関心を重視しているメディアです。記事を読んだ方がコミュニティ内での別枠で、そのコンテンツに関する会話を始めるなど情報の拡散も期待できるんですよね。
そうすると広告経由ではなく、はてなブックマークからオーガニック流入がなされるようになります。つまり、広告経由の流入とは別の流入が計測されるというわけです。このように記事の内容に、より関心を持ってくれる人やメディアに対して広告費を使うようにしています。同じ予算を投下するにしても、その投下した予算が後にどうメディアに還元されるか、それが自分たちの目的に合っているのかを考えることが大切です。
◆メディア運用担当が意識すべき「ユーザーの定性的な意見」
非アド流入を増やすためには、ブランドやメディアに共感してくれるファンの増加が欠かせません。メディアにランディングしてくれたユーザーの方をファン化するためには、コンテンツの質を高めることが重要になります。その観点に基づき、当社では1年に1回くらいの頻度でユーザー向けに、「LIFULL STORIES」が会社のブランド認知につながっているかどうかの定性的なチェックを調査やアンケートで実施しています。
ユーザーの意見でもっとも印象的だったのが、『なぜ「LIFULL STORIES」をLIFULLが運用しているのかが分からない』という内容でした。その意見は編集部としては非常に重要だと考えています。そうしたよく分からないメディアになってしまうと当然ながら非アド流入にもつながりません。メディアを誰が運営していて、何の目的で存在し、何を伝え、どうユーザーや社会と関わりたいのか――当たり前のようにも思えるメッセージをより伝わりやすくする工夫を凝らす必要があります。
ユーザーの定性的な意見は、ブランドやメディアの認知の実態を表していると考えられます。時にユーザーの声に傾聴する姿勢もメディア担当者には求められるでしょう。そうした声をもとにメディア運営のメンテナンスを意識することで、非アド流入の向上、ファン層の増加につながると考えています。
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