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入社3日目。担当したWebサイトが信じられないくらいのダメ出しを受け、そこから1300%まで改善した話
みなさん聞いてください;;
社内でUXリサーチを実施し、それをもとに施策を行ったら、なんと、
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応募数が13倍(!?)になりました!!
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こんにちは!株式会社クリーク·アンド·リバー社で働くカナと申します。前職が接客業だったわたしは、クリエイティブな仕事がしたいという想いから転職し、現在はコンテンツディレクター兼社内デザイナーとして、「HIGH-FIVE」というクリエイター専門の転職エージェントサービスサイトを運営しています。
そんなわたしが、入社してからメインで担当している仕事の一つに「UXリサーチ」があります。今やわたしたちのWebサイト、広告、サービスはUXリサーチで得られたユーザーの声のもとに設計され、成り立っていると言っても過言ではありません。……が!2年前までは一切行っていませんでした。
このnoteではわたしたちがUXリサーチを始めたきっかけや、手段、その成果を綴っています。UXリサーチを担当されている方、これからUXリサーチに挑戦される方。この記事を通して、「UXリサーチってやっぱり良いものだよな~」と思っていただけたらうれしいです。
気合を入れて書いたら長めになってしまいましたが、最後までお付き合いくださいませ。
UXリサーチをはじめたきっかけ
2022年8月。1人目のコンテンツディレクターとして入社したわたしの初めての仕事が、株式会社グッドパッチの「定性リサーチ・コンテンツ方針策定支援の報告会」への参加でした。
当時、集客目的で作られた「HIGH-FIVE」はなかなか利用者が増えず、申込数も徐々に目減りする状況であり、社内で考えた施策も芳しい効果が得られない……という状態。そこでサイトリニューアルを実施するにあたっての情報収集・企画提案を、UXリサーチのプロである株式会社グットパッチに依頼した、という流れでした。
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エージェントに関するコンテンツを多く掲載していた。
HIGH-FIVEのユーザーであるWebクリエイターが普段どのような情報をどこで目にし、転職について考えた時にどんな行動をとるのか。そういった彼らの生態を探るために、UXリサーチにてクリエイター数名にインタビューを行った、その結果の報告会。
入社3日目のわたしは状況がまだよく理解できておらず、「お客様からの声を直接聞ける報告会なのだから、きっとたくさん褒めてもらえるんだろう~!」と、わくわく気持ちで臨みました。……ところが。
「このサイトには自分が欲しい情報がありません」
「自分向けだと思いません」
「転職エージェント個人のプロフィールなんて正直気にしない」
「ストックフォトが使用されていて不信感」
「そもそも何のサイトなのか分からない」
ちょっとまって……。思っていたのと全然違う……。
想像していたような誉め言葉は一切なく、5人中5人がダメ出し祭り。当時は、これから自分が担当するメディアに対して、特大の悪口を言われてしまった気分になり、かなり落ち込みました。
そしてトドメの結論。
現在のHIGH-FIVEは、想定していたクリエイターに刺さっていない。
報告書に書かれた一文が今でも忘れられません。
早くも絶望した入社3日目でしたが、そんなわたしの横で目をきらきらさせていた社員がひとり。HIGH-FIVEの編集長であり、部署内でマーケティングを担当するアベです。
わたしがジョインする前までは、彼がひとりで集客全般を担当し、その一貫でサイトを立ち上げ、運営していました。つまりHIGH-FIVEを作った張本人であるわけで、わたしよりも落ち込んでいるはず……と思いきや。
「カナさん!!とても良い時間でしたね!やっぱり答えはユーザーが持っていますね!!」
あまりにも楽しそうに言うもので、驚きました。その時は、「きっとわたしが落ちこまないように明るくふるまってくださっているのだろう」と思って、納得していたのですが……。
今回この記事を執筆するあたり、この時のことについてアベに改めて聞いてみました。
それまでの2年間、「エージェントをタレント化して、エージェントに応募してきてもらう」という動線を設計してひとりでやってきたんだけど、うまくいかなくて。ずっと自分の仮説の中だけで動いていたので、初めて第三者の意見を入れていくというところが非常に楽しみだったんです。
正直、意見を言われたときは「おお、結構言うな~」と思いながら、ちょっと落ち込んでたよ(笑)。大切に作り上げたサイトだから、少しイラっとも。でも一番の目的は「集客ができるサイトにすること」だったので、頂いた意見は素直に受け止めることができましたね。
そうやっていろんな方の意見が聞けたことで、転職活動に必要なものは「エージェント情報」ではなく「求人情報」だと分かったし、あのままエージェントのタレント化をコンセプトで進めていたら、いまのHIGH-FIVEは無かったと思います。
このお話を聞いて、今となってみればあの時アベが目を輝かせていた理由が分かるなと思いました。(勝手に明るくふるまってくださるだけだと思ってしまい、ごめんなさい……!)
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その後、報告いただいた内容……つまりはユーザーの生の声をもとに、サイトのコンセプトや方針を見直し、フルリニューアル。
この辺りからわたしもがっつり関わっていったのですが、実際に応募数の増加・流入者の質の向上につながっていくところを目の当たりにし、「答えはユーザーが持っている」というアベの言葉を深く実感したのでした。
この出来事がきっかけで、それまで全く行っていなかった「UXリサーチ」の大切さを部署全体で認識し、転職エージェントサービスを運営をしていくにあたって、自分たちでもリサーチの機会を増やしていこう!ユーザーの声を聞いていこう!という方針になったのです。
わたしたちのUXリサーチ
入社後サイト内のコンテンツのひとつとして「転職者インタビュー」を実施していたわたしが、UXリサーチも兼ねて担当することになりました。といってもUXリサーチはまったくの未経験。まずは他社の事例や本などから情報収集。そして幸いなことにプロの仕事を見たあとだったため、初めは見よう見まねで進めていきました。
①UXリサーチの目的
まず行ったのは、正しい(欲しい)情報を得るための「リサーチの設計」です。大手エージェント会社に比べるとまだまだ認知の低いわたしたちが、どんな市場でどんなターゲットに向けて、何を強みに押し出していけば、求職者から選んでいただけるサービスになるのか。そういったリサーチを実施するための目的を明確化しました。
対象:HIGH-FIVE転職エージェントサービス
目的:応募数を増やす
課題:応募数を増やしたいが、自分たちの強みや推しポイントが分からず、競合他社との差別化を図れない、自分たちの打ち出し方が分からない
明らかにしたいこと:USP(=自社製品やサービスが持つ独自の強み、または顧客に提供できる価値)
②UXリサーチの方法
求職者の行動心理や体験をより深く探るために、方法は質的調査を採用。転職後の忙しい時期に、求職者の方のお時間を頂くことが想像以上に難しく、初めはまったくインタビューが取れませんでした。それでもリサーチの大切さをエージェントに発信し続け、入社確定フェーズの方を把握しながら、毎週毎週追いかけを行っていきました。
対象者:弊社サービスを利用して転職された求職者
方法:対面orオンラインでのインタビュー(質的調査)
時間:45分
質問内容:弊社を見つけたきっかけ、転職エージェントの印象的なサポート、他に使ったエージェントサービス・求人サイトなど
頻度:月に2~3人
長いこと担当していると、自分の欲しい答えに寄せた質問をしてしまいがちなので、毎回緊張感を忘れず、フラットな気持ちで臨むこと。そして頂いた意見やフィードバックはそのまま受け取るのではなく、現場のエージェントに必ず事実確認をするように心がけています。
2年前、手元に一言一句すべて記載した原稿を用意して臨んだ初めてのインタビュー。クリエイターの皆様を相手にして、自分で話をまわせるだろうか……と、緊張のあまり声と手の震えが止まらなかったことを覚えています。今や雑談を挟めるまでに成長しました(笑)。
③UXリサーチを分析する
集まった声はペルソナシート・共感マップを使って分析を行っています。分析はマーケティングチーム全員で行うのですが、録画したインタビュー動画を見ながら、どこがわたしたちのUSPになりそうか、伸ばすべきところは?改善点は?サービスに活かせるヒントはないか?……などをディスカッション。
USPに直結するようなキラーワードは必ずメモを取り、そのままコンテンツや広告クリエイティブに活用したりもします。
分析をする日はみんなで朝から晩まで会議室に籠り、一日中動画を見るのですが……インタビューを行った本人が、自分の動画を見ることほど恥ずかしいことはないですね。大切な時間だとは分かっているのですが、これが結構苦痛です(笑)。
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なるべくすべての動画に目を通すようにしていますが、最近ではAIにインタビュー動画を読み込ませ、事前にUSPの抽出や整理を行うこともあります。
④UXリサーチを活用する
そのようにして分析した結果は主に以下のようなところで使用しています。一緒に結果や成果なども書いてみます。
1.実際のサービスへの反映
(例)エージャントの良い動きは全体に発信
2.サイト運営での利用
(例)対応職種が分かりづらい→TOPページに対応職種配置
3.広告クリエイティブでの利用
(例)インタビューから抜き出したUSPをLPやバナーのキャッチコピーとして使用
4.コンテンツ化
(例)UXリサーチを転職者体験談としてコンテンツ化→CVが取れる記事に
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UXリサーチをやっていて良かったと感じること
UXリサーチを始めてから約2年半。現在に至るまで、約50人のユーザの声を聞いてきました。「自分には必要ない」とクリエイターインタビューで言われ落ち込んだあの日から、たくさんの方の声を聞き、ひとりでも多くの方に選んでいただけるようにとサービスの改善に努めてきました。
このようにUXリサーチを起点に様々な施策を行ってきましたが、結果、なんとこの2年半で応募数が13倍にもなりました!
「HIGH-FIVEのサイトが素敵だったから応募した」
こんな涙が出そうになってしまうくらい嬉しいお言葉を頂けることも。
まだまだ成長途中ですし、時には直接厳しいお言葉を頂くことも正直あります。それらを真摯に受け止め、もっともっと頑張らなければいけません。
UXリサーチは、問題の回答集みたいだなと思っています。まさにアベが言った「答えはユーザーが持っている」ってやつです。うまくいかない理由や課題は彼らが全部知っていて、聞けば解決方法を教えてくれる。
こんなに面白い仕事、他にはないんじゃないかな、と思ったりもします。
もし今後、関わるプロダクトやサービスが変わっても、自分の役職が変わっても、モノづくりの世界にいるうちは、この仕事をいつまでも続けたいと思います。これからもユーザーに誠実であり続けるために。
最後までお読みいただきありがとうございました!
文:HIGH-FIVE編集部かな